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日本語教育について

国語教育と日本語教育の違い

「書く」に「ない」(否定)を足して…、というと、
日本人なら「書ない」になるが、外国人は「書くない」というのが普通だ。

そもそも日本語が母語として<獲得>されている日本人への「国語教育」は、言語教育というよりも<人間形成的意義>をもっている。

ただ、系統的に日本人といっても外国育ちの帰国子女などは、ここで言う日本人には入らないことに注意しよう。

言語というのは、髪の毛の色や瞳の色のような<遺伝的伝承>と違って、環境による<文化的伝承>なので、見た目では判断できない。

見るからに欧米系の人が、日本語ペラペラ、関西弁ならなおさらのこと、そんな外国人に<違和感>を覚えた経験はないですか。

日本社会(厳密には単一民族ではない)は、民族的に等質な社会だと思い込んでいる人が多いためか、異質なものに対する経験がとても<脆弱>です。

まとめ

日本語を教える…、その対象は「日本語ができない人」で、日本語ができない日本人を含む外国人です。

日本語を教える…、その主体は、日本人とは限らない。
世界ではむしろ、ノンネイティブ(非日本語母語話者)教師の方が日本人教師よりも多い。

DATA

海外の日本語教師のうち、日本語を母語とする教師は30%弱(12,676人)で、約70%が日本語を母語としない現地の教師である。-国際交流基金、2006年

言語の習得をどう見るか

(人間の)言語の習得をどう見るかについては、言語教育では教え方をどうするのかに関係してくる。

母語は、<無意識>に獲得され、第二言語は、意識的に学校教育などで知識を蓄積される。

“acquisition”

日本の言語学の本には、習得、獲得などの用語が混在することがあるので、冒頭の使い分けを理解しておこう。

ただし、母語獲得の条件としては、臨界期(レネバーグの仮説)までの絶え間ない母語のインプットが必要。

臨界期(臨界期仮説ともいう)が、いったい何歳頃までのことかは、諸説ある。漠然と思春期とも思えるが、大体その程度の年齢までに習得がなされる。

習慣形成説(後天説)…スキナー
生得能力説(先天説)…チョムスキー

習慣形成説は、行動主義心理学者に支持されたアプローチ、のちに生成文法の創始者チョムスキーからの批判を受ける。

習慣形成説に立つ教授法として、1950~1960年代に世界中を席巻したオーディオ・リンガル法がある。学習観を行動主義心理学、言語観を構造主義言語学に拠ったものである。

まとめ

幼児の言語習得過程は、いろいろな教授法のモデルになっている。

かつて、習慣形成説と生得能力説の間で論争があったが、臨界期までに、環境からの刺激と生得的な言語能力が備わっていることの両面が欠かせないことだけはハッキリしている。

発展

バイリンガリズムという世界もあるので、こちらの方面へも手を広げていってください。

「教える」ということ

「うれしい」と「楽しい」は、どう違いますか?

外国人から質問されて、とっさにコタエラレルだろうか。
「うれしい」のは、うれしくって…。 
「楽しい」のは、楽しいんです!?
と言いたいところだが、それでは教師失格。
まず、違いを明確にするため、「うれしい」場合についてハッキリ説明する。

STEP1 試験を受ける
 ↓
STEP2 一生懸命勉強した
 ↓
STEP3 試験に合格した
 ↓
GOAL (努力が報われて)うれしい!

「先生! 北海道は冷たかったです」

う~ん、意地悪をされたのか・・・。それとも阿寒湖に落ちたのか…。(実はよくある誤用です)

こんなときは、

冬です → 水に手を入れます → 冷たいです
氷です → 氷をつかみます → 冷たいです

具体的な状況を挙げていきます。
触れたり、さわったりしたときは「冷たい」を使います。
気温が低いときは、「寒い」を使いましょう。

まとめ

「ココロが冷たいときにも使います」なんて、余計なことは言わないこと。目の前の学習者のレベルに合った説明にとどめよう。

教師は、すべて説明しなくちゃいけないという<強迫観念>は捨てよう。初級の授業は、言いたいことを我慢することも必要です。

発展「S-S思考」のすすめ

ことばの意味を説明するというよりも、
(1)Situation 状況を考えて、
(2)Sentence 適切なを作る習慣をつけましょう。